「主体性を持って行動してほしい…」「指示待ちにならないで…」「新しいことに挑戦できていない…」と言われたことはありませんか?
「主体性」とは、自分の意志や判断で行動して取り組む力のことで、社会人基礎力の「前に進む力」に含まれている12の能力のひとつです。主体性について詳しく説明します。

前に踏み出す力の詳細はこちら
社会人基礎力の詳細はこちら
主体性とは?
主体性とは、自分の意志や判断で行動して取り組む力のことです。つまり、何かをしようとするときの元となる心持ちがあり、物事の良し悪しを見て、自分の考えを決め、あることを目的として行動することです。
人は何かをしようと思う心持ちがなければ行動しません。行動するためには行動する理由や原因があります。その理由や原因を「動機」と言い、目的や目標を達成するまで続ける過程や働きを「動機付け(モチベーション)」と言います。
例えば、上司から「主体性を発揮しなさい」と言われて仕事をがんばったとします。人に言われて行った行動は受け身の行動です。これは主体性が発揮されたわけではありません。
このような状態が続けば、「言われれば行動するが、言われなければ行動しない」といった、言われたことしかできない人になる可能性があります。
本来、主体性は自分の意志で判断し、責任を持って能動的に行動することですから、時と場合によっては、自分の役割や相手が求めている枠組みも超えて行動することがあります。

主体性とわがまま・自分勝手との違い
枠組みを超えて行動することは「わがまま」や「自分勝手」とは違います。
自分の意志で判断して行動することは、「わがまま」「自分勝手」と思われ、チームワークを乱すと思う人もいるかもしれません。
しかし、自分の意志で判断・行動しても、チームの一員として、当事者意識と自利利他の精神を持ち、責任を持って行動すれば「わがまま」「自分勝手」にはなりません。
当事者意識とは、目的や目標を自分ごととして意識することです。自利利他の精神は、自分が幸せになると同時に他人も幸せにするということです。
周囲などの都合や事情を考えずに、自分勝手に行動する無責任な行動とは違います。

主体性を発揮するためには?
「指示待ち人間」という言葉があります。主体性が発揮できず、受け身で行動する人のことです。
学生時代に親から「勉強しなさい」と怒られたことはありませんか? 怒られたから勉強する、怒られなかったら勉強しないというのは、外部からの影響を受けた動機付けです。
このように動機付けには、外部から影響を受けた「外発的動機付け」と自分の気持ちから影響を受けた「内発的動機付け」があります。主体性を発揮するためには、内発的な動機付けが必要です。
なぜなら、外発的動機付けは外部からの影響がなければ行動しませんし、影響を受けたとしても効果が長続きしないからです。
例えば、外発的な動機付けとして給与や賞与があります。これらは行動の動機に繋がりやすいですが、慣れてしまうので効果が長続きしない可能性があります。また、給与や賞与は会社の業績によって変動することもあり、業績低迷で給与や賞与が下がると動機付けがなくなる可能性があります。
そこで、必要なのが内発的動機付けです。内発的動機付けは、自分の意志・判断で「したい」と思うことです。

人の欲求を満たすには?
主体性を発揮するためには、内発的動機付けが必要です。内発動機付けは「したい」と思う気持ち、つまり、人の欲求と言えます。
欲求とは欲しいと望むことです。欲しいものが得られれば欲求が満たされます。欲求が満たされるということは、満足して不満がないということです。これを人は幸せと言います。
人の欲求を5つの階層に分けた考え方に、マズローの欲求段階説というのがあります。5つの階層はピラミッド状で、低階層の欲求が満たされると次の上階層の欲求を求めるようになるとされています。
- 生理的欲求…生命維持の欲求(食事・睡眠・呼吸など)
- 安全の欲求…安全な生活の欲求(健康維持・経済的安定・安全な暮らし・安定した仕事など)
- 社会的欲求…社会集団に所属して安心を求める欲求(会社・サークル・家族に属して安心したい、他社から愛されたいなど)
- 承認欲求…周囲から認められたい、自分を認めたい欲求(他人からの評価:他者からの尊敬、地位への渇望、名声、利権、注目、自分自身の評価:自己尊重感、技術や能力の習得、自己信頼感、自立性などを得る)
- 自己実現の欲求…自分の能力や可能性を発揮し、自分がなりえるものになりたいという欲求(ある分野での成功など)。
社会人なら、仕事をして給与をもらい、定住し、食事と睡眠が満たされていれば、「生理的欲求」「安全の欲求」は満たされていると思います。「社会的欲求」も会社に所属し、趣味でサークルにも入り、結婚して家族もいれば満たされていると考えてもいいでしょう。

会社が提供するものは外発的動機付け
会社によっては用意されている就業規則や社内規定。これらはすべて外発的動機付けです。
内発的動機付けは、沸き起こった興味や関心、意欲による動機付けですから、会社が与えてくれるものではありません。
従業員に主体性を高めてもらうため、高い報酬や手厚い福利厚生を用意した結果、報酬・福利厚生を受けることが目的になり、結果として内発的動機付けを失う心理状態をアンダーマイニング効果と言います。
会社が用意する「マズローの欲求段階」ごとの就業規則や社内規定、福利厚生の例です。
- 生理的欲求…最低賃金の保障、賃金の定期払い、勤務日数や労働時間など
- 安全の欲求…法定福利厚生(社会保険・労働保険)、健康診断、有給、労働安全衛生など
- 社会的欲求…法定外福利厚生(社員旅行、レクリエーション)など
- 承認欲求…人事評価、表彰制度など
- 自己実現の欲求…目標管理制度、提案制度、自己啓発の援助など

主体性を高める必要があるのか?
仕事の目的は何でしょうか。「生活費を稼ぐため」なら、生理的欲求が満たされると動機付けはなくなります。「安定した暮らし」なら、安全の欲求が満たされると動機付けもなくなります。
つまり、現状に満足していると、これ以上の主体性を発揮する必要はありません。
今、財欲や所有欲、出世欲、名誉欲のない人が増えていると言われています。原因は価値観の変化(内面的充実や自己実現の重視)、経済的要因(経済不安や賃金停滞)、技術と情報の進化(デジタル化や情報共有の普及)、環境意識の高まり、そして人間関係の重視からくると言われています。
現代社会では、物質的な豊かさよりも内面的な充実や自己実現を重視する人が増えていると言われています。幸せは、物質的な所有や地位、名誉からではなく、自分自身の成長や人間関係、趣味や興味から得られると考える人が増えたのではないでしょうか。
そういったことから、ミニマリストといったライフスタイルが広まり、必要最小限の物を持ち、シンプルに生きることが幸せであると感じる人が出てきました。この影響で、財欲や所有欲が減少したのかもしれません。
財欲がなければ、必要以上にお金を稼ぐ必要もありません。家や車も必要なければ、散財もしません。また、今以上のお金を稼ぐ必要がなければ、出世は役職が付き責任が重くなるので求めない人もいることでしょう。
しかし、企業は主体性のある人材を求めています。現代は、不安定で予測不能な「VUCA」の時代と言われています。企業が存続をかけて戦っていくためには、主体性を持った人材が必要なのです。
主体性の源泉は人の欲求です。人の欲求は他人にコントロールされるものではありません。つまり、主体性のある人になるかどうかは本人次第です。
ですから、企業ができることは、内面的な充実を支援する企業文化の導入し、やりがいのある仕事を提供、柔軟な働き方の促進、学習機会の提供、定期的なフィードバック、非物質的な報酬制度を導入することです。これにより、現代の価値観に合った人材を引きつけられます。
また、主体性がない人は、主体性をあまり発揮しなくても仕事ができる職種をお勧めします。決められた作業を繰り返す仕事や管理業務などです。誰でも仕事には向き不向きがあります。適材適所で仕事をすることも良いでしょう。
逆に、新規事業の立ち上げや売上に直結するような職種の場合は、主体性を発揮することが求められます。企業側と働く側が主体性について適材適所で働くことを意識するだけで、ミスマッチによるストレスは減るでしょう。

主体性を鍛えるには?
マレーの欲求リストで診断する
内発的動機付けを高めるためには、自分の欲求を知るために自己分析します。そこで、無料で自己分析できるマレーの欲求リストをご紹介します。
マレーの欲求リストとは、アメリカの心理学者ヘンリー・マレーが作った人の欲求を分類したリストです。マレーは欲求リストは、臓器発生的欲求(第一次的欲求)と心理発生的欲求(第二次的欲求)に分かれます。
臓器発生的欲求(第一次的欲求)は生理的な欲求です。
- 吸気欲求(呼吸)
- 飲水欲求
- 食物欲求
- 感性欲求(身体的な感覚を得る)
- 排泄欲求
- 性的欲求
- 授乳欲求
- 暑熱・寒冷回避欲求
- 毒性回避欲求
- 障害回避欲求(病気・怪我・死を避ける)
心理発生的欲求(第二次的欲求)は、社会的な欲求です。
| 物質の欲求 | |||
| 1 | 獲得欲求 | お金・モノを手に入れたい | □ |
| 2 | 保持欲求 | お金・モノを手放したくない | □ |
| 3 | 保存欲求 | モノを集めて良い状態で保存したい | □ |
| 4 | 秩序欲求 | 物事を整理整頓して綺麗にしたい | □ |
| 5 | 構築欲求 | 物事を組み立てたい・築き上げたい | □ |
| 向上心・野心の欲求 | |||
| 6 | 承認欲求 | 他人に認められたい・尊敬されたい | □ |
| 7 | 達成欲求 | 困難を乗り越えたい・成功したい | □ |
| 8 | 顕示欲求 | 他人の注意を引きたい、楽しませたい | □ |
| 9 | 優越欲求 | 他人より優れていたい・社会的地位を上げたい | □ |
| 保身・自己防衛の欲求 | |||
| 10 | 不可侵欲求 | 批判から逃れたい・自尊心を傷つけないようにしたい | □ |
| 11 | 防衛欲求 | 非難や軽視から身を守りたい・自分を正当化したい | □ |
| 12 | 屈辱回避欲求 | 屈辱や辱めを避けたい・失敗して笑われたくない | □ |
| 13 | 反動欲求 | 失敗をリベンジしたい・克服して名誉を守りたい | □ |
| 支配・権力の欲求 | |||
| 14 | 支配欲求 | 他者をコントロールしたい・影響を与えたい・統率したい | □ |
| 15 | 服従欲求 | 優秀な人に服従したい・協力したい・仕えたい | □ |
| 16 | 模倣欲求 | 他人を真似たい・同意したい・同化したい | □ |
| 17 | 自律欲求 | 他人の影響や支配に抵抗したい・独立したい | □ |
| 18 | 攻撃欲求 | 他人を軽視して意地悪したい・攻撃して奪いたい | □ |
| 19 | 屈従欲求 | 他人を認め降伏したい・謝罪したい・罰を受け入れたい | □ |
| 20 | 対立欲求 | 独自的存在でいたい、他人と違った行動をしたい | □ |
| 禁止の欲求 | |||
| 21 | 非難回避欲求 | ルールや法律に従い、処罰や罪を避けたい | □ |
| 愛情の欲求 | |||
| 22 | 親和欲求 | 他人と交流したい・仲間に加わりたい・仲良くしたい | □ |
| 23 | 養育欲求 | 困っている人を助けたい・同情したい・保護したい | □ |
| 24 | 援助欲求 | 保護されたい、同情されたい、愛されたい | □ |
| 25 | 拒絶欲求 | 他人を無視したい、差別したり他人を排除したい | □ |
| 情報・知識の欲求 | |||
| 26 | 認知欲求 | 知識を学びたい・理解したい・好奇心を満たしたい | □ |
| 27 | 説明欲求 | 指摘したい・証明したい・情報を与えたい・教えたい | □ |
| 娯楽の欲求 | |||
| 28 | 遊戯欲求 | リラックスしたい・気晴らししたい・遊びたい | □ |
欲求を満たせるようにする
自分の欲求を認識したら、ビジョンを描きます。ビジョンとは将来なりたい姿です。
例えば、保存欲求(モノを集めて良い状態で保存したい)があったとします。ビジョンはコレクションのための趣味部屋があり、棚にはレア品であふれているとします。
次に目標を立てます。趣味部屋の用意や棚の購入、レア品を手に入れるための資金準備などです。そして、具体的に手に入れるための計画を立て、行動に移していきます。
これらを実現するためには、資金の準備が必要となり、主体性を持って仕事に取り組めるとしたら、内発動機付けになります。

働く目的を報酬だけにしない
主体性を鍛えるためには、会社が用意した報酬・福利厚生などの外発的動機付けだけに頼らないことです。たとえ、内発的動機付けによる行動でも、報酬・福利厚生が与えられると報酬が目的になってしまいます。これをアンダーマイニング効果といい、主体性がなくなります。
そこで、会社ではエンハンシング効果が使われます。「褒められる」という外発的動機付けによって、内発的動機付けにする方法です。
たとえば、「褒められる」という理由で読書をしていたら、次第に読書そのものが楽しくなることがあります。この場合、「褒められる」という外発的動機付けをきっかけに、読書に興味ややりがいといった内発的動機付けが高まったといえます。
人は人前で褒められることによって、自己肯定感が上がって、自信が付き、主体性が高まります。また、能力・結果だけではなく、過程も褒められることで、失敗を恐れずに行動でき、自分自身が認められたと感じることができます。
報酬などもそれを目的とするのではなく、報酬をもらって仕事をしているうちに、楽しさややりがいを見つけられるように心がけます。

外発的動機付けを内発的動機付けに変える
行動にはたとえ、外発的動機付けであっても動機付けが必要です。外発的動機付けには、レベルがあり、自己決定理論では、次の表のように自分の意思による選択の度合いが高まると、内発的動機付けへと変化していくとしています。
動機付けは、まったくの無気力な状態から、内発的動機付けを得るのは難しいとされ、報酬などの外発的な動機付けを得てから、徐々に内発的動機付けに変化されていくことが重要だとされています。
| 自己調整 | 行動の理由 | 動機付け |
|---|---|---|
| ① 無調整 | やる気なし | 非動機付け |
| ② 外的調整 | 報酬や罰 | 外発的動機付け |
| ③ 取り入れ的調整 | 義務感 | |
| ④ 同一化的調整 | 必要性 | |
| ⑤ 統合的調整 | 価値観との合致 | |
| ⑥ 内発的調整 | やりがい | 内発的動機付け |
自己決定理論では、動機付けを内発的動機付けに変化させるためには、自律性・有能性・関係性という3つの欲求を満たすことが大切だと言っています。
- 自律性…自己の行動は他者から強制されるのではなく、自分で決めたいとする欲求
- 有能性…自分には能力があり、社会の役に立っていると思いたい欲求
- 関係性…他者と尊重しあう関係を築きたいという欲求
特に自律性が最も重要視されており、「行動を自ら決定した」とより強く感じられると心理的な満足感が高まります。
主体性を高める方法とは?
主体性を高めるためには、どの段階まで動機付けられたかを知る必要があります。
無調整(非動機付け)を抜けるには?
働く意欲がない状態です。仕事に対して「嫌い」「辛い」「面倒」といったネガティブなイメージを持っています。まずは、外発的動機付けで得られる報酬を意識することから始めます。
外発調整(外発的動機付け)を抜けるには?
いやいや仕事をしている状態です。義務感で仕事をしているだけなので、「仕事をする目的を考える」ことで新たな価値を見出すことができれば主体性が上がります。
取り入れ的調整(外発的動機付け)を抜けるには?
仕事が結果重視になっている状態です。将来のビジョンなどを意識して、主体性を上げていきます。
自律性の欲求を満たす
上司に思っていることややりたいことを伝え、できる限り任せてもらえるようにします。これにより、自分の行動に達成感ややりがいを感じ、自律性が得られます。
有能性の欲求を満たす
有能性は褒めてもらうことで満たされます。承認欲求が満たされ、有能感が高まります。
関係性の欲求を満たす
上司や同僚と十分なコミュニケーションを取り、信頼関係を築くことで欲求を満たすことができます。
まとめ
主体性は、自分の意志で行動し責任を持つ能力であり、外発的動機づけに頼らず内発的動機づけを育むことが大切です。
会社が提供する外発的動機付けは一時的で、内発的動機付けが持続的な行動になります。自己分析を通じて欲求を認識し、それに向かって具体的な目標を設定することが、主体性を鍛えることになります。




